研究課題
サルに、固視または追跡眼球運動を行わせながら、動くランダムドット像を短時間呈示し、眼球運動の有無によってMT野およびMST野の活動に違いが見られるかどうかを検討した。その結果、MTニューロンのほとんどが視覚刺激の網膜上の動きに応じた反応(網膜座標依存性)を示すにもかかわらず、MSTニューロンの多くは視覚刺激のスクリーン上の動きに応じた反応(空間座標依存性)を示すことが明らかになった。このことは網膜上視覚刺激の動きそこでさらに追跡眼球運動の方向を変化させ、MST野のニューロン活動の方向依存性が網膜座標依存性と空間座標依存性のどちらにより強い相関を持つかを調べるため、ランダムドット像の動く方向を上下左右斜め(8方向)に変化させた。その結果、MTニューロンの方向選択性はほぼ正確に網膜座標系に従うのに対し、MSTニューロンでは空間座標系に従う傾向が強いことが明らかとなった。またMSTニューロンの多くは、ニューロンの適刺激方向と反対方向への追跡眼球運動を行った場合に、最も強い空間座標依存性を示した。これらの結果は、MTニューロンが「眼球運動によってもたらされる網膜上での視覚刺激の動きの情報」をコードしていること、またMSTニューロンが、MTニューロンから得られた網膜座標系の視覚情報と眼球運動情報とを用いて空間内の速度を再構成することにより、「現在遂行中の眼球運動を補正した空間座標系の情報」をコードしていることを示唆している。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (11件) 備考 (1件)
Journal of Neurophysiology 103
ページ: 230-243
Journal of vision 10
ページ: 13.1-17
PLoS Computational Biology 5
ページ: 1000433
Journal of Neurophysiology 102
ページ: 1736-1747
Cerebral Cortex (In press)
http://www.med.kyoto-u.ac.jp/J/grad_school/introduction/1602/