研究概要 |
単語を継時呈示し,単文の統語処理過程を事象関連fMRIにより検討した.その結果,文法課題では助詞を呈示すると左BA47および左側頭葉/角回の活動が,単文最後の動詞を呈示するとブローカ野の活動が見られた.左角回の活動は,名詞の意味処理に関係すると考えられるので,名詞をX,Yなどの無意味文字にして再度実験を行ったところ,左側頭葉/角回の活動だけが消えた.以上の結果から,BA47が助詞による統語的意味役割の付与に関わることが明らかになった(Ogawa,Ohba,and Inui,2007).また単文の動詞呈示において,下前頭回だけでなく,9野と44野の境界付近の活動が見られた.この部分は動詞生成課題などの活動が見られる部分に対応している.Inuiら(1998)は日本語の複文である左分岐文(LB)および中心埋め込み文(CE)を用いてその理解過程における脳活動を調べた.我々は再び同様の実験を事象関連fMRIにより複文および階層構造を持たない等位接続文(CS)の呈示時の活動の分析を行った.また名詞の意味的影響を排除するため具象名詞の代わりに,X,Y,Zの三種類の文字を,動詞として「叩く」「倒す」「押す」の三種類を用いた.その結果,(CE>LB)∧(CE>CS)で左BA9付近や下前頭回,上頭頂小葉の活動が有意であった.CEではLBやCSにない処理が必要で,それは9野後方部を中心として機能する.一方,ブローカ野の中央部はCSや単文の処理に共通して活動し,文処理の基本機能に対応している.おそらく,文の意味へのマッピングに関係しているのであろう.また単文処理(Ogawa,Ohba,and Inui,2007)で見られる9野の位置はこれよりやや前方である.
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