研究課題
1.線条体細胞による行動選択肢の価値の表現木村と上田は、人間情報通信研究所(ATR)の銅谷賢治、鮫島和行と共同研究を行い、「線条体の投射細胞が、ドーパミンによる報酬予測の誤差信号に基づいて、行動選択肢の報酬価値を表現する」という仮説を検証する研究を行った。ハンドルの右倒し、左倒し運動によって得られる報酬確率を10,50,90%の3段階で組み合わせ、試行錯誤で価値の高い選択肢を選ぶ行動課題をサルに行わせた。線条体の投射細胞の神経放電を記録したところ、右倒しまたは左倒し運動に選択的に報酬価値の高低を表現するものが39%を占めることを明らかにした。実験研究者と計算理論家が共同研究することによって強化学習仮説を客観的に証明することができた。2.視床線条体系の機能に関する実験研究南本、堀と木村は、大きな報酬を伴う選択肢も可能であるが、わずかな報酬しか得られない選択肢が要求された時には、視床正中中心(CM)核の半数以上の細胞が特異的に活性化されることを発見した。また、大きな報酬を伴う選択肢の要求の後、サルが行動を始める直前にCM核を電流刺激すると、望ましくない選択肢の行動のような行動に変った。以上の結果は、報酬の獲得に向けた望ましい意思決定や行動選択が不可能な場合に、次善の選択肢を選ぶメカニズムを示唆しており、報酬に基づく意思決定と行動選択に関する新しい包括的な理解への突破口を開いた。3.中脳ドーパミン細胞、線条体細胞の発達、形態と機能を支える分子基盤中川は、黒質のドーパミン神経細胞に対する生存維持・遅延性神経細胞死の減少、軸索再生・修復促進効果を持つ物質を探索するために胎生後期の中脳腹側の初代培養系による実験系を確立した。伏木は新規細胞接着分子Igsf4の発現をマウスの発生期脳を対象としてin situ hybridizationによって調べたところ、大脳皮質、基底核、視床、小脳等にて特有の発現を示すことを明らかにした。
すべて 2005
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