研究課題
本研究は小脳が滑らかな運動指令の生成にどのようにして貢献しているのか、その機構解明を目的としている。特に、サルの脳から取り出した信号を小脳ランダムウォーク仮説に基く「人工小脳」に入力することにより「眼球ロボット」の滑らかな運動制御が自動的に実現できることを示す。本年度は、1)サッカード課題を訓練したサル2頭に対し、前頭眼野または補足眼野に8本1組のマルチ電極を埋め込み、最大10個を越えるニューロンの活動を同時計測することに成功した。2)眼球ロボットの2軸制御を、高速応答性、剛性に優れたパラレルリンク機構により実現した。取り付けるCCDカメラや構成物の重量をもとに必要トルク量、慣性モーメントなどを考慮して機構設計を行い、サッケードの最大速度600[deg/s]の約7割、400[deg/s]までの動作確認を行った。3)マルチ電極あるいは従来の単一電極を用いて、課題遂行中の前頭眼野と補足眼野の神経活動を記録し、これらニューロンの活動の性質を調べた。前頭眼野には従来の報告通り、視覚目標の位置や運動の方向に応じて活動するニューロンが存在した。一方、補足眼野には、前回の試行の運動開始信号のタイミングに応じて発火の開始時期が変わるニューロンや、運動方向と報酬の組み合わせに応じるなどの特徴を持つニューロンが存在した。これらは補足眼野の従来の知見を更新する発見である。4)小脳型運動制御において重要な役割を果たす登上線維信号に関する知見を総説にまとめた(Kitazawa & Wolpert, Trends in Neuroscience)。5)ランダムウォーク仮説を包含する一般的な学習理論の幾何学についての研究が伸展した(Nishimori,2005)。
すべて 2006 2005
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