研究課題
本研究は小脳が滑らかな運動指令の生成にどのように貢献するのか、その機構解明を目的としている。1. 眼球運動制御に関する研究補足眼野と前頭眼野から記録したニューロンの活動を入力として眼球ロボットの制御を行い、生体同様の滑らかな運動をロボットで実現する。前年度までに、前頭眼野と補足眼野からマルチ電極を使って同時記録した複数のニューロンの活動からサッケード開始のタイミングと振幅、方向を推定することにある程度成功した。しかし、記録できる神経活動の数が急速に減少することが問題であった。本年度はCyberkinetics社製の32chのマルチ電極を1頭のサルの前頭眼野に埋め込み、長期にわたる成績の維持を狙った。その結果、従来は埋め込み後2週間以内に成績のピークを迎えていたのに対し、記録細胞数(20-25個)、正推定率(開始時間64%、目標38%)ともに埋め込み30-40日後に最高の成績となり、以後も比較的長期にわたり良好な成績を維持することに成功した。2. 腕運動制御に関する研究目標に向かって手を伸ばす到達運動は、終点の誤差の分散を最小化するような運動と近い。このような制御が、登上線維が伝える終点の誤差の情報を使って実現されていることを検証したい。今年度は終点の誤差に基づく到達運動の学習であるプリズム順応に対する休憩の効果をサルとヒトで調べた。まず100回の試行で徐々に視野をずらした後、連続して100回の試行を行わせ、計200回になったところで1時間の休憩を置き、その後さらに100回の試行を行い、計300回の試行を行わせた。1時間の休憩をはさんだ条件の24時間後の後効果は休憩なしの条件の後効果のおよそ2倍であった(p<0.01)。ヒトを被験者とした実験でも300回または400回の試行の途中に1時間から2時間の休憩を入れた場合、後効果が24-48時間持続するという結果が得られた。これらの結果は1時間の休憩とその後の運動の繰り返しで学習効果の定着・強化の過程がトリガーされることを示唆する。
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Psychonomic Bulletin & Review 16
ページ: 182-189
Anatomical Science International 83
ページ: 195-206