研究課題
大脳皮質の神経回路の動態に関し、近年発見された神経活動伝播(神経雪崩)の特異な統計的性質を説明する新しい神経回路モデルを構築した。この仕事の意義は、大脳皮質の神経アセンブリのもつ独特の配線パターンを理論的に示唆したことにある。また大脳皮質の神経ネットワークの形成過程が、臨界ダイナミクスであることを提案し、その過程がもつべき性質を理論的に規定することに成功した。また行動中の動物の大脳皮質の神経回路には、ガンマ振動という40Hz前後で同期した振動活動が顕著に見られるが、興奮性細胞のバースト発火に依存する同期発火メカニズムについて、非線形分岐理論からの研究を行い、同期を起こさせる本質的プロセスを解明した。一方、大脳基底核の重要な働きの一つである行動選択のメカニズムに対して、強化学習理論からのアプローチを開始した。その結果、動物やヒトの意思決定に見られるマッチング法則の仕組みを、TDアルゴリズムに基づく一般的な枠組みから導出することに成功した。現在、さらに一般的にマッチングを不正確な最適化行動の結果であるとする一般理論を発展させている。今後、より広範な行動選択のメカニズムを与える理論を構築するとともに、このような行動学習の背景にある神経回路レベルのメカニズムの研究にもつなげる予定である。なおこれら以外に、大脳新皮質の2/3層と5層における位相応答の違いの実験的解明、新しい入力積分の神経メカニズムの提案と実験的検証、非定常なバースト伝播モードの提案、大脳皮質ニューロンが示すスパイク発火の変動性と情報表現の関連性などについての研究を進めてきた。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
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