研究課題
ニホンザルにバーチャルリアリティ(VR)建造物内を指定した部屋に移動するナビゲーション課題を訓練し、海馬傍回より課題遂行中のニューロン活動を記録した。ナビゲーション課題では、サルに部屋の内部を呈示して行き先を指示する。遅延期間の後スタート地点が呈示され、サルはジョイスティック操作により、そこから指示された部屋に移動する。移動は決められたチェックポイント間の移動(前進)と、チェックポイントにおける方向転換によって行う。記録された海馬傍回ニューロンの活動の典型例では行き先の部屋の呈示期間(CUE)に、正面の部屋に対し最も強く応答し、2階の部屋にはほとんど応答しなかった。またゴール時(GOAL)の応答にも同様の傾向が見られた。それ以外の移動中の期間には顕著な応答は見られなかった。これまでに記録したニューロンのうちのほとんど(92%)はCUEの期間に活動し、このうち多く(42%)のニューロンは部屋に対して選択的な活動を示した。CUEとGOAL期間以外の移動中の特定の場所において活動するニューロンも少数(12%)見られたが、チェックポイントにおけるジョイスティック操作に選択的な活動を示すものは記録されなかった。これらの結果からは、海馬傍回はナビゲーション課題遂行において、視覚情報の処理からその場所の識別に至る過程に関与していると考えられ、ヒトにおいて海馬傍回の損傷によって既知の建物などが同定できなくなる街並失認が生じるとする先行研究(Takahashi & Kawamura,Cortex 38:717-725,2002)とも合致する。
すべて 2010 2009
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
Neuroscience 167
ページ: 1-10
Cerebral Cortex 20
ページ: 846-858
Neurosci Lett. 463
ページ: 1-5
PLoS Comput Biol. 5
ページ: e1000433
J Neurophysiol 101
ページ: 3284-93
Neuroimage. 44
ページ: 1380-6