研究課題
物体を認識するための重要な手がかりの一つは表面反射特性である。代表的な表面反射特性の一つである光沢の知覚にかかわる神経表現を明らかにするため、様々な光沢をもつ視覚刺激に対する下側頭皮質ニューロンの反応を調べた。BRDFデータベースから選んだ33種類の表面反射特性をもつ物体画像を視覚刺激としてコンピュータグラフィクスを用いて作成し、注視課題を行っているサルに呈示した。下側頭皮質の上側頭溝下壁皮質に光沢に対して選択的に応答するニューロンが固まって存在することを見出した。それらのニューロンの選択性は、物体形状や照明環境を変えても保たれており、また画像中のピクセルをランダムに再配置した刺激に対しては選択性が失われた。これらの結果は、記録した下側頭皮質細胞の選択性が光沢と無関係な刺激特徴に対する選択性ではなく、光沢に対する選択性であることを示している。次にこれらのニューロンの選択性が光沢感の知覚とどのように関係しているかを調べるために、光沢感を作る心理空間の二つの軸(c軸とd軸)の値を系統的に変化させた刺激セットを作成し、これらのニューロンがこの光沢心理空間をどのように表現しているかを調べた。その結果、光沢に選択性を示したニューロンはc軸とd軸のいずれか一方または両方に沿って、規則的に反応強度が変化することが分かった。この結果は、物体色の重要な要素である光沢感が下側頭皮質において表現されていることを強く示唆するものである。
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