研究課題
1)物体認識の観察角度非依存性の成立過程:ひとつの観察角度からしか見たことのない物体を別の観察角度でよく似た他の物体から識別することはできない。物体が回転する中で異なる観察角度の像(投影像)を見るうちに、その物体を観察角度によらずに認識できるようになる。従来の説では、異なる投影像を短い時間の間に見ることにより、異なる投影像の表現が脳の中で結びつけられるとされていた。今回、サルを用いた行動実験により、異なる投影像をそれぞれ独立に「見慣れる」ことだけで、回転をまたいでその物体を認識できるようになることを発見した。この結果は、刺激を見慣れる過程で出来上がる刺激像の脳内表現に、観察角度の変化によって変化しにくい図形特徴が用いられることを示唆する。2)課題依存的なサルの体制の影響:下側頭葉皮質細胞の刺激選択性が課題依存的に変化するサルの体制により変化するかどうかはこれまで不明であった。同じ刺激セットを用いて,サルにグループ内弁別とグループ間弁別をブロック別に交代で行わせたとき、およびグループ内弁別とカテゴリー的弁別を交代で行わせたときの下側頭葉皮質細胞の刺激選択性を比較した。サルの行動はブロック間で明らかに異なったが、下側頭葉皮質の細胞の選択性に差は見られなかった。下側頭葉皮質細胞の反応が、課題の弁別規則の違いによって影響を受けないことを示した。3)報酬との連合がもたらす長期的変化の検討:刺激-報酬連合は動物の行動を決める最も基本的な連合のひとつである。しかし視覚刺激と異なる報酬条件との連合の学習に伴い下側頭葉皮質細胞の刺激選択性に変化が生じるかどうかは分かっていない。この研究では刺激-報酬連合を刺激-行為マッピングから完全に分離して、刺激-報酬連合の下側頭葉皮質細胞の刺激選択性への影響を決める。サルへの課題の訓練を終了し、細胞活動記録を開始した。
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