研究課題
本研究では下側頭葉皮質およびその関連脳部位が視覚的物体認識長期記憶にどのように寄与するか解明することを目指している。平成21年度の主な研究成果は以下の通りである。我々は経験により微妙な物体の形の違いを見分ける視覚的エキスパートになることができる。エキスパートの優れた弁別能力は経験した物体群に特異的である。この視覚的エキスパートの脳基盤を明らかにするために、3個×3群の物体から構成される刺激セットを用い、サルが違いの大きい群間の弁別だけを行なつているときの下側頭葉皮質細胞の反応と、違いの小さい群内の刺激間の弁別を行なっているときの下側頭葉皮質細胞の反応を比較した。両区間ともに9個の刺激に対する反応を記録した。群内の弁別は困難であり、数ヶ月の学習を必要とした。両区間の間で、下側頭葉皮質細胞の9個の刺激に対する反応の刺激選択性のチューニングカーブに違いはなかった。一方、群内の弁別を行なっているときは群間の弁別だけを行なっているときに比べ、9個の刺激の2次元空間配置の中で単調に反応の大きさが変化する細胞の比率が増加した。これらの細胞は、刺激空間の三角形の頂点に位置する3個の刺激のどれかに最も強く反応し、そこから、2次元空間配置の中である一次元的方向に添って単調に反応の強さを減少させた。これらの結果は、特定の刺激に鋭くチューンした反応を持っ細胞の出現ではなく、弁別すべき刺激群全体の分布に対して単調に反応の大きさを変化させる下側頭葉皮質細胞の出現が、視覚的エキスパートの神経基盤であることを示唆する。
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