研究課題
網膜視蓋投射が正確に形成されるためには視蓋の極性形成が必須である。本年度は峡部からのFgf8のシグナルによるERKの活性勾配が視蓋iの前後極性形成に重要な役割を果たすという仮定の下に実験を行った。DN-Ras(ドミナントネガティブ型Ras)を強制発現するとERKのリン酸化が抑制され、後脳領域に視蓋が分化する。DN-Rasにより、En2、及びEphrinA2,A5の発現が抑えられた。鼻側網膜線維の中には本来の視蓋から、異所的視蓋まで伸びるもの、視蓋からでて、菱脳を進んでいくものもあった。このことは、正常視蓋の後極には視神経のストッパーが存在することを示唆している。耳側網膜繊維の中には視蓋上の標的を通り越すものがあった。これらのことは実際ERKの活性化により視蓋の前後極性が決まっていることを示唆している。En2を強制発現すると、細胞自律的にはEphrinA2の発現が抑制され、その周りにEphrinA2の発現が誘導されていた。En2はFgf8,Fgf18の発現も細胞自律的には抑制し、細胞非自律的に誘導していた。Fgf8,Fgf18は正常胚では峡部で強くそこから前の方に勾配を持って発現している。エレクトロポレーションによる強制発現を行うと、両者ともERKを活性化するが、Fgf8はEphrinA2を細胞自律的には抑制し、細胞非自律的に誘導することを示唆するような結果が得られている。Fgf8はSprouty2を細胞自律的に誘導したが、Fgf18は誘導することがなかった。Fgf8とFgf18の違いはSproutyの発現を誘導するか否かによっていると思われる。これらのことは、En2はFgf8の発現を細胞非自律的に誘導することにより視蓋の前後極性の形成に関わっているということ、また、Fgf8がFgf18を誘導し、Fgf18-Ras-ERKシグナル経路によりEphrinA2が誘導され、視蓋の前後極性が決まるということを示唆している。
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