異体類ヒラメ胚とカレイ胚における視交差の交差状態が左右逆になっている(ヒラメ胚では右眼球由来の視神経軸索が背側を通過し、カレイではこれが逆になっていて左眼球由来の視神経軸索が背側を通る)という現象を、実験形態学的・分子発生学的手法を用いて解析した。まず、異体類では視神経軸索が伸長する位置が前後にずれていて、ヒラメ胚とカレイ胚ではその前後のずれが左右逆転していることを見出した。このずれが最終的な視交差の逆転に繋がることを見出し、軸索伸長の左右差を示す初めての証拠を得た。PKAのレベルを変化させることによってさまざまなシグナリング経路の阻害を行う薬剤のひとつであるフォルスコリンをヒラメ胚とカレイ胚の発生初期に作用させると、ヒラメ胚では右視神経軸索のみがカレイ胚では左視神経軸索のみが影響を受けることを見出し、とくに軸索伸長に重要であるヘッジホッグ経路に注目して現在も解析を進めている。このアッセイ系の1つとして異体類胚の眼球(あるいは眼胞)の器官培養系を確立した。これとは別に、ヒラメ胚1000個体以上の頭部を左右に分け、それぞれからRNAを抽出しメガソート法によりヒラメ胚頭部において左右非対称に発現する遺伝子の探索を行い、hsp90、laminin receptorなどの候補遺伝子を獲得した。現在、これらの遺伝子の発現および機能解析を継続中である。一部のデータは水産学会に和文総説として掲載され、論文としても現在作成中である。
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