オレキシン神経細胞特異的に緑色蛍光タンパク質(EGFP)を発現する遺伝子改変マウス(orexin/EGEP mice)を用いたオレキシン神経細胞のスライスパッチクランプによってカテコールアミン類に対するオレキシン神経細胞の反応性を調べた。その結果ノルアドレナリンがオレキシン神経細胞を強く過分極させ抑制する事が明らかとなった。受容体選択的作動薬(UK14304)および拮抗薬(Idazoxan)を用いた解析から、この反応はアルファ2受容体を介するものであることを明らかにした。さらに、下流でGタンパク質共役型内向き整流性カリウムチャネル(GIRK)が活性化していることを見いだした。またノルアドレナリンだけでなく、アドレナリンやドーパミンなどの他のカテコールアミンでも同様にアルファ2受容体を介してオレキシン神経細胞を抑制することが分かった。一方、シナプス電流の解析からカテコールアミンはオレキシン神経細胞への直接作用だけでなく、介在神経の活動も修飾することが明らかとなった。カテコールアミンはオレキシン神経細胞に入力するGABA作動性介在神経の活動を促進し、一方Glutamate作動性介在神経細胞の活動を抑制するによってもオレキシン神経細胞を抑制した。これらの反応にはそれぞれアルファ1受容体とアルファ2受容体が関わっていることを見いだした。このようにカテコールアミン作動性神経は複雑な様式でオレキシン神経細胞の活動調節を行うことを同定し、睡眠覚醒に関わる神経回路の一部とその機能を解明した。
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