研究課題
1.マウス海馬スライスにおいて、苔状線維を25Hzで5回刺激すると、幼若マウスではシナプス伝達の増大とともに、刺激中のpresynaptic fiber volleyが増大することを見出した。この増大はGABA_A受容体アンタゴニストにより消失することから、シナプス前線維に存在するGABA_A受容体の活性化により誘導されることが明らかとなった。また、この増大は抑制性介在ニューロンの活動を選択的に抑制したときにも有意に減弱したことから、介在ニューロンから放出されるGABAにより誘導されることも明らかとなった。膜電位イメージング解析から、GABA_A受容体の活性化により苔状線維が脱分極することによってpresynaptic fiber volleyが増大することがわかった。このように、発達期の苔状線維では、GABAが興奮性の作用を示してシナプス伝達の増強を引き起こすことが明らかとなった。2.内在性のノシセプチンが海馬CA1領域のLTPを抑制的に調節していることを明らかにした。マウス海馬スライス標本において、ノシセプチン受容体のアンタゴニストの投与によりLTPが減弱したことから、内在性のノシセプチンがLTPを抑制していることが示唆された。CA1錐体細胞からホールセル記録により膜電流を記録して、入力線維にLTP誘導の際に用いられるのと同じ高頻度刺激を与えると、ノシセプチンにより活性化された内向き整流性カリウムチャネルを介すると考えられる電流が記録できた。また、この電流は介在ニューロンの活動を抑制するエンケファリンにより有意に抑制されたことから、介在ニューロンよりノシセプチンが放出されることも明らかとなった。したがって、内在性のノシセプチンがシナプス活動依存的に放出され、海馬でのシナプス可塑性を動的に調節していると結論された。
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