研究課題
1.成長円錐は神経回路形成で決定的に重要な構造で、その理解は神経科学の根本的基盤に直結する。しかしその分子的理解は遅れており、軸索成長の分子基盤の情報量は少ない。よって、プロテオミクス解析を行うことにした。成長円錐は生後2日目ラット大脳皮質(前脳)から調製し、この標品を低張処理して膜標品をえた。この両者をtrypsin処理後、2次元LC-LC-MSによるshotgun法で合わせて900種類の蛋白質を同定し、またそれぞれのペプチド同定数を得た。さらに、偽陽性の可能性を否定するため、この系で成長円錐では初めて同定された蛋白質を中心に、約200種類の蛋白質について抗体によるラット大脳皮質の培養神経細胞の免疫染色を行って、成長円錐に局在するかどうかを確認した。その結果、免疫染色が陰性の分子は1件もなかった。また、混入によるものはきわめて少数である。またinteractomicsにおいて、成長円錐に局在することが見出された2種類の蛋白質が結合することを見出した。2.シナプス小胞のリサイクリングは、種々のステップで異なる濃度のCa^<2+>を要求する。報告者は、小胞の移動に関わるsubcellular Ca^<2+>(0.1-1μM)を要求する、syntaxin-1Aの結合蛋白質としてmyosin-Vを見出した。原子間力顕微鏡によって複合体形成を直接、可視化することに成功し、結合は明確にmyosin-Vのneck部分で生ずることを証明した。この部位を認識する抗体をクロマフィン細胞へ導入して開口放出への影響を調べ、この結合は早い相には影響せず、小胞が供給されて生ずる遅い相の放出を選択的に阻害することを証明した。以上の結果は、小胞がmyosin-Vを介して、形質膜のsyntaxin-1Aに結合でき、SNARE複合体形成を進める前のtethering過程の分子的実体である可能性を示している。
すべて 2005
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