研究課題
マウスの経頭蓋的フラビン蛋白蛍光イメージングによって体性感覚野可塑性を解析した。前肢の感覚入力は、尺骨神経・正中神経・橈骨神経・筋皮神経などによって脳に伝わる。このうち前肢手掌側からの感覚情報は尺骨神経・正中神経によって脳に伝わる。従って、前肢手掌側に触刺激を与えた場合、体性感覚野の対応部位にフラビン蛋白蛍光反応が出現するが、これは尺骨神経・正中神経の切断によって消失する。しかしながら切断後1-2時間経過すると一旦消失したはずの体性感覚野応答が再び出現し、1週間後には切断前と区別できない程度の反応が出ることを見いだした。この再び出現した応答について、残存する橈骨神経・筋皮神経を切断すると消失した。正常の動物では前肢手掌側の刺激に対する応答は橈骨神経・筋皮神経を切断しても影響されない。則ち以上の実験は、尺骨神経・正中神経を切断後、1-2時間で橈骨神経・筋皮神経の感度が上昇し、代償的に前肢手掌側からの感覚情報を脳に伝えるようになるという可塑性が生ずることを示している。前年度までの研究で、尾の先端部分を切断すると、尾の基部や後肢を刺激したときの反応領域が拡大し、尾の先端部分に対応する脳部位を駆動するという結果を示したが、今年度の成果は同様な現象を神経の部分切断という手法を用い、より判りやすく示すことに成功したと考えられる。ちなみにこの末梢神経の部分切断という手法は痛覚過敏症を引き起こす標準的な手法としても知られているので、体性感覚野の可塑性と痛覚過敏症との間には非常に密接な関連があるものと推察される。現在さらにこの神経部分切断後の可塑性のメカニズムを解析するため、様々な実験を行っている。例えばNMDA受容体阻害剤のMK801の投与により、神経切断後1-2時間で出現するはずの可塑性が阻害できること、神経切断の代わりに局所麻酔剤の神経局部への投与でも代用できることなどを見いだした。
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Neurolmage Epub ahead of print, Nov.4