研究課題/領域番号 |
17023021
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
狩野 方伸 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (40185963)
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研究分担者 |
崎村 建司 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40162325)
岡部 繁男 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (60204012)
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キーワード | 神経科学 / シグナル伝達 / シナプス / 発達 / 脳・神経 |
研究概要 |
本研究は、小脳の登上線維とプルキンエ細胞間のシナプスをモデルとして、発達脳における不用なシナプス結合の除去と有用な結合の強化固定化の機構解明を目指した。本年度は以下の成果を得た。 1.生後1週から2週のマウスの小脳スライスを作製し、プルキンエ細胞から登上線維に由来するminiature EPSC(mEPSC)を記録して、登上線維シナプスの樹状突起への移行が何時起こるのかを評価した。この結果、殆どのプルキンエ細胞において、樹状突起への登上線維の移行は生後9日頃に始まり、しかも移行するのは最大振幅を持つ最も強化された登上線維のみであることが明らかになった。 2.小脳と下オリーブ核の共培養標本でおこる登上線維シナプス除去とin vivoでおこるシナプス除去が同様の分子機構に基づくかを、薬理学的実験とRNAiによる機能分子ノックダウンにより検討した。その結果、代謝型グルタミン酸受容体1型、NMDA型グルタミン酸受容体、デルタ2グルタミン酸受容体の遮断によって、共培養下の登上線維シナプス除去が阻害または遷延することが確認できた。これらの結果は、組織培養下の登上線維シナプス除去とin vivoのシナプス除去が同じ分子機構に基づくことを示唆する。 3.生後4日から9日のラット小脳プルキンエ細胞からin vivo patch clampingを行い、複数の登上線維入力の群発に由来するバースト発火を記録した。電流固定化で、最初のスパイクに先行するEPSPの振幅を調べたところ、スパイクの直前のEPSPの振幅が最も大きく、スパイクに先行する時間間隔が長いほど振幅は小さかった。この傾向は生後日齡が進むほど顕著になった。また、同様の傾向は電圧固定化におけるEPSCの記録でも認められた。この結果は、発達に伴って、スパイクと同期した登上線維EPSPが選択的に強化されることを示唆する。
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