研究課題
本課題では、視覚遮断による大脳皮質視覚野の機能変化が神経回路にどのような変化として固定されるのか、どのような分子機構が関わるのかという疑問に取り組んでいる。いくつかの試みの中で、成果を得られた2点について報告する。1) 薬理学的に抑制した視覚野での入力軸索退縮発達期の哺乳類大脳皮質一次視覚野では、一時的な片眼遮蔽によって、遮蔽眼の情報を伝える入力軸索が退縮する。これまでに薬理学的に抑制した皮質での研究により、入力軸索と皮質ニューロンの神経活動のみに依存したhomosynapticな軸索退縮メカニズムが存在することを示した。この抑制皮質での可塑性について年齢依存性を調べたところ、眼優位可塑性のピークとされる生後24日付近の動物では顕著な逆向きの眼優位可塑性は観察されず、臨界期の終盤である生後40日付近で強く観察されることが明らかとなった。軸索形態を解析したところ、臨界期ピーク付近で皮質を抑制しても、顕著な軸索退縮は認められなかった。このことから、抑制皮質に見られる軸索退縮を伴う眼優位可塑性は、発達期の後期にのみ発現する可能性が考えられる。2)発達期片眼遮蔽による核内リン酸化ERKの増加眼優位可塑性の分子過程における、ERKの役割を調べるため、ラットの一次視覚野において、活性化型であるリン酸化ERKの量や分布に対する片眼遮蔽の影響を免疫染色法、Western Blot法により検討した。短時間片眼遮蔽を施すと、リン酸化ERKの陽性核を持つニューロンが増加した。また核画分でのリン酸化ERKタンパク量も増加した。核内リン酸化ERKの増加は、発達期の片眼遮蔽によってのみ引き起こされ、両眼遮蔽や成熟期の片眼遮蔽では観察されなかった。したがって、片眼遮蔽により核内リン酸化ERKが一過性に増加すると考えられる。
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