内臓の状態を発火頻度としてコードする1次求心線維から2次ニューロンへの周波数伝達特性を脳スライス標本におけるパッチクランプ法を用いて解析した。ラットおよびマウス(一部GAD67-GFPマウス)の孤束核(NTS neuron)および迷走神経背側運動核ニューロン(DMX neuron)を同定して1次求心性線維の束である孤束の刺激によって誘発される単シナプス性興奮性シナプス後電流を記録した。シナプス伝達の周波数応答特性を、0.1-50Hzの連続頻回刺激に対するfrequency-dependency index (FDI;20Hz刺激に対する応答/0.1Hz刺激に対する応答)を用いて評価し、また、短期可塑性およびそれに及ぼす細胞外Ca^<2+>濃度の影響をpaired-pulse ratio (PPR)を用いて評価した。さらに2次ニューロンの種類、局在、細胞径、樹状突起パターン、入力臓器、および、伝導速度などとの関連を解析した。 以上より、孤束複合体内のシナプス伝達特性は以下の3型に大別された。 I型DMX neuron:広帯域応答型(FDI>0.5);PPR=〜0.8;Ca^<2+>低依存性 II型DMX neuron:低周波応答型(FDI<0.4);PPR=〜0.4;Ca^<2+>低依存性 NTS neuron:超低周波応答型(FDI<0.2);PPR=〜0.2;Ca^<2+>高依存性 これらのシナプス伝達特性は、ニューロンの局在、細胞径、樹状突起パターン、入力臓器、および、伝導速度に依存せず、神経伝達物質の放出特性、特にその短期可塑性の特性に依存していた。以上より、標的細胞に依存した伝達物質放出特性の差異があり、それによってシナプス伝達の周波数特性が規定される事実が明らかになった。これらの機構は、周波数依存的求心情報フィルターとして機能している可能性がある。
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