研究課題
嗅球軸索の伸長経路には、モノクローナル抗体lot1で染色される神経細胞群が局在する。これらの細胞を薬剤で破壊すると嗅球軸索の伸長が停止することから、これらが嗅球軸索のガイドを担う道標細胞であると考えられている。しかしその作用は単純な軸索誘引や反発では説明が難しく、道標細胞と軸索との相互作用の詳細な解析が待たれていた。その解析の大きな障害となっていたのが、道標細胞を生きたまま可視化する技術がないことであった。もしこれができれば、実際の嗅球軸索と道標細胞の相互作用をリアルタイムで検出したり、道標細胞の発現遺伝子の網羅的な解析が可能になるなど、大きなブレークスルーとなると期待された。最近の研究で、この道標細胞の特異的マーカーであるモノクローナル抗体lot1が、代謝型グルタミン酸レセプター1(mGluR1)を抗原として認識していることがわかった。mGluR1は成体においては比較的広範囲に発現しているが、発生期終脳においては嗅索道標細胞に非常に限局して発現している。そこで本研究では、mGluR1遺伝子座にEGFP (Enhanced Green Fluorescent Protein)を挿入したノックインマウスを作成し、生体内の嗅索道標細胞の生きたままでの可視化を目指した。定法に従い、mGluR1遺伝子にEGFP cDNAを結合したノックインベクターを作成して、相同組み替えを起こした6個のES細胞クローンを得た。そのうちの3個のクローンを用いてキメラマウスを作成し、ノックイン遺伝子アレルが子孫に伝搬したヘテロマウス3系統を作出した。しかしいずれのマウス系統においても、EGFPの発現は確認できず、さらにノックインアレルをホモに持たせたマウスにおいてもEGFPの発現は確認できなかった。これらのノックインマウスにおいては、mGluR1遺伝子は期待どおり破壊されており、ホモマウスにおいては小脳失調などの顕著な表現系も認められるので、ノックイン操作自体はうまく起こっていると思われる。mGluR1プロモーターの活性が弱くEGFPの発現量が低すぎて検出できない可能性があるのではないかと考えている。
すべて 2006 2005
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Development 133
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