代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)のサブタイプのひとつであるmGluR1は、G蛋白質共役型の受容体であるが、複数のG蛋白質(Gs、Gq、Gi)と機能的に共役し、さらに、小脳において非選択性陽イオン電流を発現させるなど、多様な機能を示す受容体である。多様なmGluR1の機能を制御するメカニズムを探るために、イメージングの技法を用いて研究を行った。実験方法として、mGluR1が複数のG蛋白質を活性化する過程を、Ca^<2+>指示薬とcAMP感受性蛋白質を用いて可視化した。細胞内Ca^<2+>濃度およびcAMP濃度上昇は、それぞれ、GqおよびGs蛋白質の活性化を反映するものである。多様な機能を制御するメカニズムの一つして、異なるリガンドによる異なる活性型構造を見出し、PNAS誌にて報告した。グルタミン酸のみならず三価陽イオンのGd^<3+>もmGluR1を活性化することが知られているが、グルタミン酸がGqおよびGs系を活性化するのに対して、Gd^<3+>はGq系のみを活性化するという結果から得られたものである。一方、細胞内の受容体C末端領域による機能制御の可能性について検討するため、本実験系で以下の知見について確認した。i)C末端領域の膜近位にあるRRKKという陽電荷クラスターがmGluR1とGs蛋白質との共役を阻害すること、ii)長いC末端領域が陽電荷クラスターをマスクすること。C末端領域は約350アミノ酸残基からなり、RRKKは細胞膜直下から40番目に位置している。そこで、RRKKの配列をマスクするのに重要な部位を検索するため、C末端領域をいろいろな長さで削ったところ、C末端領域遠位の90残基を削ることで、Gs系の活性化が消失することが明らかとなった。この遠位部には、陰電荷クラスターが存在するため、上記のRRKKと静電的に相互作用して、mGluR1のシグナル伝達を制御するという可能性を見出した。
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