本研究の第一の目的は、Ca^<2+>感受性蛍光タンパク質で標識された視交叉上核(SCN)スライス培養を網膜神経節細胞(RGCs)と共培養させることにより、RGCs突起とSCNニューロンがシナプス形成する決定的瞬間を顕微鏡下で捕らえ、SCNニューロンの生後発達過程をin vitroで再構築することである。また、この共培養によりSCNニューロンに見られる神経発火やサーカディアンCa^<2+>濃度リズムがどのように影響されるのかを解析することにより、出力リズムが増強されていく過程を可視化しようと試みた。 その結果、まずRGCsの分散培養およびスライス培養の作成と、これらに対するCa^<2+>感受性蛍光タンパク質遺伝子(YC2.1およびYC3.6)の導入に成功した。これらは、コラーゲンゲル上での培養と無血清条件下において突起伸張が確認された。また、視交叉上核に投射するメラノプシン陽性RGCsにおいて発現が認められ(論文準備中)、時計調節に係わる可能性が示唆されているコレシストキニンA受容体(CCKAR)の機能解析を行ったところ、CCKAR刺激(CCK8投与)実験において用量依存的な細胞内Ca^<2+>濃度上昇を確認した。CCKA受容体欠損マウスでは体内時計調節における光同調能力が極めて弱いことが報告されており、今後CCKAノックアウトマウスにおいてRGCsのCa^<2+>応答に異常が見られるのかどうか解析する予定である。 SCNスライス培養とRGCs共培養実験は突起伸張の方向性と距離が定まらず未だにin vitroにおけるシナプス形成を確認できていない。今後より効率的なモデル実験として不死化したSCNプロジェニター細胞(SCN2.2細胞)の分化誘導実験とRGCsのシナプス形成過程を組み合わせた実験をおこなう予定である。
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