研究課題
神経因性疼痛の発症は脊髄ミクログリアのP2X_4受容体の発現が亢進することに起因している。しかし、末梢神経損傷により脊髄ミクログリアのP2X_4受容体が亢進に至る分子メカニズムは全くわかっていない。本研究は、このメカニズムを細胞外因子に注目して解析することを目的とした。フィブロネクチンは、濃度及び時間依存的に.ミクログリアのP2X_4受容体の発現を亢進させた。フィブロネクチン刺激により、ミクログリアP2X_4受容体mRNAは6時間後から、またP2X_4受容体蛋白質は24時間後に約2倍増加した。フィブロネクチンによるP2X_4受容体亢進は、β1インテグリン阻害により消失した。したがって、ミクログリアのインテグリンが、フィブロネクチンを受容することによりP2X_4受容体発現を制御していることが明らかとなった。次に神経因性疼痛モデル動物を作成し、末梢神経損傷側と非損傷側の脊髄のフィブロネクチン量を比較解析した。損傷後3日後から7日目まで、損傷側脊髄のフィブロネクチン量は統計学的に有意に増大した。これは、痛み行動及びP2X_4受容体亢進と強く相関していた。ATP処置したミクログリアをnaiveな動物の脊髄内に投与すると神経因性疼痛アロディニアが観察されることが知られている(Tsuda et al.,Nature2003)。通常、50μM以上の濃度のATPで刺激をしたミクログリアを髄腔内に投与した場合のみアロディニアが誘発されるが、フィブロネクチン処置を行ったミクログリアは極低濃度のATP(5μM)で刺激を行っただけでも、その髄腔内投与により強いアロディニアが誘発された。これは、P2X_4受容体発現亢進に依存的であった。本研究では、P2X_4受容体発現亢進のメカニズムを追及し、フィブロネクチンが重要な役割を果たしていることを明らかとした。フィブロネクチンは細胞外マトリックスで、細胞の増殖、突起伸展等の際、細胞の足場となる重要な蛋白である。中枢神経系では発生の初期以外では通常あまり発現していないが、外傷、炎症等の傷害時に、その発現が増大することが知られている。本研究では、末梢神経を傷害することにより、損傷側の脊髄で強いフィブロネクチンの増大が観察された。このフィブロネクチン増大の経時変化は、アロディニア発症及びP2X_4受容体発現亢進のそれとよく一致していた。従って、フィブロネクチンの発現亢進は、脊髄ミクログリアのP2X_4受容体発現亢進及びアロディニア発現に強く関与しているものと考えられる。
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Glia (印刷中)
Purinergic Signaling (印刷中)
J.Invest.Dermatol., 124
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Glia 49
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Purinergic Signaling 1
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