研究課題
【神経上皮細胞の動態のタイムラプス解析】胎生期における神経幹細胞である神経上皮細胞は、基底膜側と脳室側を結ぶ細長い突起を有し、その中を細胞周期に従って細胞核がエレベーターのように往復し、先端側すなわち神経管の内側に到達したときに分裂期に入り、そこで2つの娘細胞に分裂する。このエレベーター運動のメカニズムを解明するために、終脳のスライス培養系において、エレベーター運動をタイムラプス解析したところ、Pax6変異ラットではエレベーター運動に異常が生じ、S期において核の位置が不安定であり、また脳室面より若干離れた位置で分裂する像が多数見られた。さらに、核の移動に重要と考えられる中心体を可視化してタイムラプス解析したところ、本来S期からG2期において脳室面近くに局在する中心体も、Pax6変異ラットにおいて不安定な様相を示した。現在、転写因子Pax6の下流で中心体の位置の安定化に関わりうる因子を探索している。【神経管細胞の増殖と分化を統合する分子機構の網羅的解析】発生過程における神経新生に関して、神経上皮細胞で特異的に発現する転写因子の下流で神経上皮細胞の増殖や分化を制御する因子に関する知見を得るために、野生型脳とPax6遺伝子変異ラット脳で発現する遺伝子のプロファイルをマイクロアレイ法により比較したところ、発現に変化の見られる興味深い遺伝子が約20個浮かび上がってきた。そのうちの1つであるFABP7は、脂肪酸結合タンパクをコードし、定量RT-PCRおよびin situハイブリダイゼーション法によってもPax6遺伝子変異ラット脳で劇的な発現現象が再現された。RNA干渉法によりFABP7の機能を阻害したところ、神経上皮細胞の増殖が低下し、ニューロンへの分化が亢進した。したがって、FABP7はPax6の下流で神経上皮細胞の増殖を維持するのに必須であることが示された。
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