研究課題
我々は小脳プルキンエ細胞特異的グルタミン酸受容体GluRδ2が小脳シナプス可塑性、運動学習およびシナプス形成に中心的な役割を担っていることを明らかにしてきた。GluRδ2が如何なる機構により多様な生理機能を示すのかを明らかにするために、PDZ蛋白質と相互作用するC末端細胞質内領域のS segmentとT siteに着目し、C57BL/6系統由来のES細胞を用いた標的遺伝子組換えによりこれらの領域を欠失したGluRδ2△SおよびGluRδ2△Tマウスを解析した。Shank結合領域であるS segmentの欠失は、シナプスに局在する受容体蛋白質を著しく減少させた。一方、Delphilin、PTPMEG、PSD-93などが結合するT siteの欠失は、受容体蛋白質のシナプスへの局在には影響しなかったが、平行線維シナプスのLTD誘導の障害と登上線維支配領域の拡大をもたらした。したがって、小脳プルキンエ細胞の平行線維シナプスに局在するGluRδ2はTsiteを介したシグナル伝達により平行線維シナプス可塑性と登上線維支配領域を制御していることが示された。さらに、Tsiteに結合するPDZ蛋白質の中でGluRδ2と同様に小脳プルキンエ細胞の平行線維シナプスに局在するDelphilinに着目した。Delphilin欠損マウスは、小脳回路の発達は正常であったが、平行線維シナプスのLTDの誘導閾値が低下しOKR適応学習が促進されていることを見出した。このマウスではOKRネットワークの中で平行線維シナプスのみで可塑性が亢進していることから、平行線維シナプスのLTDがOKR適応学習において律速段階の制御を担っていることを示唆する。これらの結果から、小脳シナプス可塑性、運動学習および小脳ネットワーク形成に中心的な役割を担うGluRδ2の分子機構の一端が明らかとなった。
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