研究課題
線虫C.elegansは、飼育された温度を記憶し、温度勾配上で、その温度に移動する。また飼育された環境の温度情報と餌環境を受容し、この飼育温度と餌状態という2つの情報を関連付けて飼育温度に対する応答行動を変化させる。この温度走性と呼ばれる行動は、C.elegansにおいて最も高次な神経機能の働きを必要とする行動である。本研究は、温度走性を行動パラダイムとして利用し、温度情報処理や行動の神経回路動態の基盤となるシグナル伝達経路やシナプス可塑性に関与する分子を同定し、記憶や学習の分子機構の基本原理を明らかにすることを目的とする。当該年度では、AFDは、小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUTに依存したグルタミン酸を神経伝達物質として、AIYの活動を抑制するが、AFDは、AIYの活動を上昇させることも明らかになっているため、AFDからAIYへの情報伝達には、少なくとも、抑制性と興奮性の2つの伝達経路が存在していることが明らかになった(Ohnishi et al, under submission)。これらの結果は、AFDが興奮性シグナルと抑制性シグナルの両方を介して、AIYを複雑に制御していることを示唆した。また、線虫の持つ4種類のアセチルコリン受容体の突然変異体、1種類の神経ペプチドの突然変異体、そして、3種類の抑制性グルタミン酸受容体の突然変異体が、温度走性行動に異常を持つこと、神経細胞間接続にとって重要なギャップ結合形成分子であるイネキシンの突然変異体では、温度走性が異常になっていることも明らかになった(unpublished)。
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ページ: 120-127
Nature Neuroscience (未定)
Science, Japanese Scientists in Science 2008サイエンスに載った日本人研究者
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