1)膜結合型MMP制御因子RECKを欠損したマウスは、胎生10.5日(E10.5)前後で血管の発達不全を呈して死ぬことが明らかとなっている。そこで、E10.5以降のマウス発生におけるRECKの役割を明らかにするために、正常マウス胎児を用いた免疫組織化学的検索を行った。その結果、E13.5〜14.5胎児の筋肉においてRECKの高い発現が認められた。興味深いことに、RECK抗体による染色像は、筋肉発生に関わるbHLHファミリー(MRFファミリー)転写因子の内、MRF4の局在と良く一致し、MyoDの局在とは異なっていた。培養細胞を用いた実験から、RECK遺伝子の発現がMRF4により活性化されMyoDにより抑制されること、RECKの強制発現が筋管形成を抑制すること、逆にMMPの強制発現が筋管形成を促進することなどが見出された。これらの結果より、RECKがmyogenic regulatory factorsによる特異的な発現制御を受け、筋肉発生の初期には抑制的、後期には促進的な役割を果たすことが示唆された。また、これまでMRFファミリーの各メンバーは、in vivoでの発現の時期や場所が異なるだけで、生物活性は互いに似ていると考えられてきたが、RECKの制御に関しては全く逆の活性を示すことが分かった。 2)がん抑制遣伝子Rbを欠損したマウスに発生する甲状腺腫瘍において、従来がん遺伝子として知られていたN-rasが、がん抑制因子として働くことを、多重変異マウスを用いて明らかにした。 3)細胞骨格制御タンパク質Sept4が、正常な形態と活動性を持った精子の形成に必須であることを見出した。
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