研究課題
神経細胞の移動や突起伸長などの挙動を支える重要な要素として細胞外マトリックス(ECM)があるが、従来の研究はECM受容体やそのシグナル伝達機構などに重点が置かれたものが多かった。申請者らは、神経分化を含む多くの生命現象に関わることが知られているRASシグナル伝達系の機能的標的遺伝子としてRECKを発見し、この遺伝子がECMリモデリングの主要な推進役であるマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の膜結合型制御因子をコードすることを見出した。本課題では、RECK欠損マウスの解析を通して、神経回路構築におけるECMおよびECMリモデリングの役割に洞察を加えることを目的として研究を進めている。胎生期の野生型マウス中枢神経系におけるRECKの発現部位は、神経幹細胞(あるいは神経前駆細胞)とされるNestin陽性細胞とほぼ一致する。RECK欠損マウスは、血管発生の異常を伴う胎生致死形質(〜E10.5)を示すが、大脳皮質においては神経細胞の減少および早期分化が観察された。その分子機構を解析する中で、RECKがADAM10によるNotchリガンドのsheddingを抑制することが見出された(村口輝行、高橋智聡ら、Nat. Neurosci.)。また、Reckが出生直前の横隔膜において、神経筋接合部の二次ひだに集積することが見出された(川嶋ら、J. Neurochem.)。また、共同研究において、細胞骨格系タンパク質Sept4がパーキンソン病に代表されるalpha-synuclein関連神経変性疾患に対して抑制的に働くこと(猪原、木下ら、Neuron)、神経分化や機能に関わる低分子量Gタンパク質Rap1がRa1GDSファミリーの一員であるRg13を介して単量体アクチン活性化因子profilin IIと結合すること(Xu、北山ら、Cell Signalling)などを明らかにした。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件)
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