研究概要 |
神経細胞の移動や突起伸長などの挙動を支える重要な要素として細胞外マトリックス(ECM)がある。我々は、神経分化を含む多くの生命現象に関わることが知られているRASシグナル伝達経路の機能的標的遺伝子としてRECKを発見し,これがECMリモデリングの主要な推進役であるマトリックス・メタロプロテアーゼ(MMP)の膜結合型制御因子をユードすることを見出した。本研究課題では、Reck変異マウスに見られる神経系の異常とそのメカニズムの解明を通して、神経回路構築におけるECMおよびECMリモデリングの役割に洞察を加えることを目的としている。これまでの研究から、発生初期マウスの神経管においてReckはADAM10によるNotchリガンドのsheddingを抑制し、神経分化の抑制と神経前駆細胞の増殖をもたらされること、また、出生直前のマウスでは神経筋接合部の成熟に伴ってReckがこの部位に集積することが見出されている。平成21年度は、RECKタンパク質の性状、細胞レベルでの機能、RECK遺伝子の発現制御機構などについて成果を発表した。すなわち、RECKタンパク質は釣り鐘状の2量体を形成し、MMP7によるfibronectin分解を阻害する。また、RECKは細胞移動のdirectional persistenceにとって重要であることが示唆された。さらに、RECKの発現が細胞密度、血清濃度、酸素濃度などによる制御を受けること、またその際に働く分子経路を明らかにした。
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