研究課題
神経幹細胞におけるHes1の発現様式およびその意義を明らかにするために、我々が開発したリアルタイムイメージングシステムを用いて、マウス胎児終脳でのHes1の発現動態をしらべた。その結果、神経幹細胞においてHes1の発現は約2時間周期のリズムを刻むこと(オシレーション)がわかった。一方、Hes1の下流で働くプロニュープル遺伝子Ngn2やNotchリガンドDll1は、ニューロンでは持続的に発現するが、神経幹細胞ではオシレーションしていた。神経幹細胞におけるNgn2やDll1のオシレーションはHes1によって制御されており、Hes1オシレーションはDll1オシレーションを引き起こすことによって、Notchシグナルを活性化しあって神経幹細胞を維持すると考えられた。次に、タモキシフェン誘導性Creリコンビナーゼ(CreERT2)をNestinプロモーター/エンハンサーによって神経幹細胞に発現するNestin-CreERT2マウスとNeuron-specific enolase遺伝子にloxP-STOP-LoxP-DTAを挿入したマウスとを交配し、生まれたマウスに対して生後2ヶ月目にタモキシフェンを投与した。このマウスでは、タモキシフェン投与後に神経幹細胞でSTOPカセットが除かれ、その後生まれたニューロンはジフテリア毒素(DTA)を発現し、細胞死を起こす。このマウスは、海馬・歯状回依存性の空間記憶に障害があり、嗅球の組織構造が崩れた。すなわち、成体脳でもニューロン新生が必須であり、そのため神経幹細胞を維持することが重要であると考えられた。成体脳において神経幹細胞を維持する分子機構を明らかにするために、Hes1の発現をしらべたところ、成体脳の神経幹細胞にもHes1が強く発現していた。今後、成体脳の神経幹細胞におけるHes1の発現動態および機能を解析する予定である。
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Neuron 58
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Nature Neuroscience 11
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http://www.virus.kyoto-u.ac.jp/Lab/toppage.zoushoku.kageyama.html