1. mGluR1 conditional knockout(cKO)マウスの解析 mGluR1 cKOマウスを用いて、運動学習の獲得、発現、保持という諸過程のどの過程にmGluR1が必要とされるのかを調べるため、瞬目反射条件付け学習を行った。瞬目反射条件付けは、音(条件刺激)とまぶたへの電気刺激(無条件刺激)を繰り返し提示することにより、音を聴くだけで瞬きの条件反射が起こるようになる連合学習であり、小脳LTDを必要とすると考えられている。一度条件付け学習をさせたcKOマウスにドキシサイクリンを投与して、mGluR1の発現を停止させ、7週間後に再学習を行わせると、mGluR1の発現がなくなっているにもかかわらず、ドキシサイクリンを投与していないcKOマウスと同程度の条件付け反応の割合を示した。一方、ドキシサイクリンを投与して、mGluR1の発現を停止させたマウスで条件付け学習をさせ、その後投与を停止し、mGluR1の発現が回復した7週間後、再学習をさせたcKOマウスは、実験初日は、mGluR1が常時発現していないcKOマウスと同程度の反応しか示さなかったが、数日のうちに学習していった。これは、mGluR1の発現が回復したことにより、学習の獲得が新たに行われていることを示していると考えられる。これら2種類の実験結果から、mGluR1は瞬目反射条件付け学習において、1)学習の獲得に必要であること、2)学習の発現には必要ではないことが明らかとなった。 2.mGluR1結合タンパク質の機能解析 mGluR1にHomer結合を阻害するように点変異(P1147E)を導入したmGluR1 cDNAを小脳プルキンエ細胞特異的に発現するレスキューマウスを解析した。このマウスでは、運動協調能は回復したが、シナプス除去に異常が認められた。
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