研究課題/領域番号 |
17024040
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 尚亮 神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (60178499)
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研究分担者 |
柏木 香保里 神戸大学, バイオシグナル研究センター, COE研究員 (10372666)
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キーワード | プロテインキナーゼC / 遺伝子操作動物 / GFP / ライブイメージング / 神経可塑性 / テトラサイクリン制御 / コンフォーカルレーザースキャン蛍光顕微鏡 |
研究概要 |
細胞内情報伝達は、多種類のシグナル分子から構成される複数のシグナル経路がお互いにクロストークすることによって、巧妙に調節されている。分子間でシグナルが伝達されるためには、2種類以上の分子が細胞内のいずれかの部位で、一定時間共局在することが必要である。しかし、これまでに多くのシグナル経路の存在が報告されているにもかかわらず、それぞれのシグナルが「いつ」、「どこで」伝達されるかといった時間的・空間的な解析は十分には行われていなかった。情報伝達分子が、「いつ」、「どこで」、「どのような機構で」活性化を受けるかを解析することは、リン酸化酵素などシグナル分子による神経細胞応答の制御機構の解明には必須であると考えられる。 我々は、プロテインキナーゼC(PKC)が、「いつ」、「どこで」情報伝達を行なうかを可視化することを目的として、GFP融合PKCの培養細胞内に発現させ、種々の刺激によるPKCの各サブタイプの動態をライブイメージング法を用いて解析した。その結果、PKCのトランスロケーションは、刺激・サブタイプ特異的、かつ発現する細胞特異的でもあること、また、多彩なトランスロケーションは、単一のPKC分子を介した様々な細胞応答を導くことを示した。神経において、PKCなど情報伝達因子の時空間解析を行うためには、神経ネットワークの完成された個体レベルでのイメージングが必要であると考え、テトラサイクリン制御システムを用いて、NSE(neuron specific enolase)あるいはCaMKII(calcium-calmodulin dependent kinase II)プロモーターの制御により脳内発現部位を決定し、さらに、テトラサイクリンの投与により発現時期をも調節しうる、各GFP-PKC発現遺伝子操作動物を作製した。プロモーターの違いにより、発現する神経細胞は明らかに異なっており、特定の時期における、特定の神経細胞での、特定の情報伝達因子の動態の観察が可能となった。これらの動物の脳スライスを用いて、生理的条件下での神経シナプスを介した神経刺激によるPKCの神経細胞内動態を検討したところ、シナプスを介して誘導された生理的なPKCトランスロケーションは明らかに薬物刺激によるPKCトランスロケーションと異なっていることを示した。また、これらの脳部位特異的・時期特異的PKC-GFP発現遺伝子操作動物を用いたマウスの行動学的検討を行い、特定の部位でのPKCの発現が神経機能にどのような影響を及ぼすかを解析した。
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