本研究では、私達が単離した新規BMPアンタゴニストTsukushi遺伝子の網膜神経幹細胞における細胞増殖・分化機構の解明を目的とし、マウス網膜神経幹細胞を単離し培養する系を主に用いてBMP-Tsukushiシグナルの幹細胞における役割を検討した。 生後2-3ヶ月の野生型またはTsukushi欠損マウスから毛様体を剥離し、ニューロスフィアの培養系を確立した。眼1個あたりのニューロスフィアの数を数えたところ、Tsukushi欠損マウスでは野生型に比べてその数が30%ほど多かった。次に、ニューロスフィアの直径を測定し、比較した。30μm以上の直径を持つニューロスフィアの割合は野生型では5%であったが、Tsukushi欠損マウスでは20%に増加していた。さらに、1次ニューロスフィアをトリプシン処理して細胞をバラバラにした後、2次ニューロスフィアを形成させたところ、Tsukushi欠損マウスでは野生型に比べてその形成率がほぼ2倍になっていた。以上の結果かも、ニューロスフィアにおいて、Tsukushiは細胞の増殖を抑え、維持する機能を持つと考えられる。 今後は、Tsukushiの細胞分化への影響を調べるために、各々のニューロスフィアをラミニンコートしたプレート上で、網膜幹細胞の分化を誘導する条件で培養し、様々な細胞マーカーで染色して細胞分化への影響を調べる予定である。さらに、Tsukushiがどのような分子と相互作用を行い、細胞増殖を制御するニッチ分子として機能するのか追求していきたい。
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