研究概要 |
われわれは、ショウジョウバエを用いて、概日周期・覚醒睡眠制御機構の解析を行っている。特に、われわれが樹立した、睡眠の量が減少したショウジョウバエの変異株、fumin(不眠、fmn)は、遺伝学的マッピングと、cDNA・ゲノムの配列決定により、ドーパミン・トランスポーター遺伝子の機能欠失変異であることが示されている(K.Kume et al. J. Neurosci.25:7377-7384,2005)。この変異株の解析から、ドーパミンは、ショウジョウバエが不動状態にある時の反応性そのものに関係していることを薬理学的な実験などで、確認中している。また、ショウジョウバエの概日周期の中枢は、脳の中の限られた数のニューロンであることが知られており、その多くがPDF (Pigment dispersing factor)というペプチドを産生するPDFニューロンである。 そこで、ショウジョウバエの睡眠覚醒と概日周期の関係を調べるため、このPDFニューロンと、ドーパミンニューロンのそれぞれが蛍光蛋白質(GFP)でラベルされるショウジョウバエの系統を作成し、その脳を単離し、in vitroで培養する系を樹立した。 従来、単離した昆虫の神経細胞は、不安定で長期培養は困難とされていたため、培養液の改良などにより、長期培養条件の検討を行った。その結果、マウスの初期培養で用いられている、マウス胎児脳の初期培養細胞の培養上清を加えることで、1週間以上の長期にわたって安定して初代培養できる条件が確立できた。この系では、単離した神経細胞が、神経突起を伸長できることまで確認している。現在、電気生理学的・分子生物学的性質を、解析中である。
|