新規に作成した抗NF45、抗NF90抗体および抗Hu抗体を用いてマウス胎児大脳皮質抽出液より免疫沈降を行い、Hu/NF45/NF90複合体がin vivo において形成されることを明らかにした。Hu とNF45/NF90の共通標的と考えられるp21 mRNA に対するNF45/NF90複合体の影響、およびHuとの機能的関係についてレポーター遺伝子を用いて検討した結果、HuとNF45/ NF90は共役的に翻訳を促進することがわかった。一方、Musashi1がHuと直接相互作用することを発見し、その生理学的意義を明らかにしようと研究を進めている。 Musashi1 の発現は神経幹・前駆細胞において高く神経分化とともに低下することが知られ、神経幹・前駆細胞の未分化維持機構を担っている。 Musashi1は標的mRMの5' -Capに形成される基本翻訳因子複合体のkey moleculeであるeIF4Gの機能を部分阻害し、自らのRNA結合ドメインにより特異的に結合したmRNAの翻訳を抑制する働きを有する。この翻訳抑制は、Musashi1がeIF4Gと競合してPoly(A) Binding Protein (PABP)に結合することにより起こることを明らかにした。Hzfノックアウトマウスに見られる運動異常等ついてより詳細な行動解析を行った結果、自発運動の低下、姿勢維持異常、回転棒試験における運動異常が認められた。 Wire-hanging testの結果はほぼ正常であったことから、Hzfノックアウトマウスに認められる運動異常は筋力の低下によるのではなく、中枢神経系の障害によるものであることが示された。また連合学習の一つである瞬目反射条件付けにおいても有意な異常が観察された。この結果はHzfノックアウトマウスが小脳依存的運動学習を担う神経回路のどこかに障害があることを示している。
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