1. AngII受容体であるArla遺伝子にレポーター遺伝子としてLacZをKnock-inしたATla-LacZマウス(ATla Lacz/+)を用いて脳弓下器官(SFO)における細胞レベルの解析を行った。ATlaはNaxが発現するグリア細胞ではなくニューロンに発現していたことから、グリア細胞内において情報統合は行われていないと考えられた。さらにNaxが発現するグリア細胞がその活動を制御するGABAニューロンにおいてもArlaの発現は見られなかった。以上の結果から、Nax-KOでは脱水時においてもNax発現グリア細胞からGABAニューロンを介したSFOニューロンの活動抑制が掛からないが、それは、塩分摂取を亢進するArla発現ニューロンが活性化しているためと考えられる。今後Nax-KO ; ATla Lacz/+を作製し、脱水時のSFOにおけるArla発現ニューロンにおける神経活動活性の解析を行う。 2. ATla Lacz/+マウスに対して利尿剤を投与してNa+欠乏状態を誘導し、塩分嗜好性を惹起させたときのSFOにおける神経活動活性を解析したところ、活性化したニューロンのほとんどがATla発現ニューロンであった。以上の結果、SFOに存在するATla発現ニューロンが塩分摂取行動制御を担うニューロンであると考えられた。今後ATla遺伝子およびAngiotensinogen遺伝子を特異的に欠損させたマウスを作製し、塩分摂取におけるSFOでのAngII/Arla系の役割を明らかにする。 3. SFOから順向性標識を行い、いくつかの投射先を同定した。今後、それぞれの場所へのSFOにおける投射ニューロンを同定していく予定である。
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