研究概要 |
我々はほ乳類においては光を受容する唯一のニューロンである網膜視細胞の発生の分子メカニズムの解析を行っている。最近、我々は、転写因子のOtx2遺伝子が網膜視細胞の運命決定の鍵となることを見いだした。Otx2のコンディショナルノックアウトマウスの網膜では視細胞がまったくできない。分化が終わった直後のOtx2変異マウスと野生型の網膜からRNAを抽出し、アフィメトリクス社のマウスゲノムマイクロアレイ(mouse genome432 2.0 array)を用いて解析している。現在までに2回独立したアレイ解析を行った。2464個のプローブセットが変異マウスで1/4以下に下がっており、そのうち1008個のプローブセットは野生型に比べて1/8以下のレベルに低下していた。2回とも、これらにはロドプシンやCrxなどが含まれており、このアレイ解析が再現性良く機能していることが示された。申請者らは、発現レベルが高いものから順に解析しており、その中から視細胞特異的な発現を示す新規遺伝子MR-Sを単離した。 我々はさらにMR-Sの生化学的解析ならびに生物学的機能解析を行った。MR-Sは重合しクロマチン制御に関わっていることが強く示唆された。また、MR-Sは転写を抑制するリプレッサータンパク質としての機能を有することを見出した(Inoue et al.,2006)。 また、マイクロアレイ解析で同定されてきた遺伝子群の中で、既に20個以上の遺伝子のヒト相同遺伝子は、マッピングされた遺伝性網膜疾患の染色体座近くに位置することが判明した。現在、これらを含めたいくつかのクローンについて、患者の家系で変異が認められるかPCRとDHPLC法を用いてスクリーニングを検討している。
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