研究課題/領域番号 |
17024063
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉原 良浩 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, チームリーダー (20220717)
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研究分担者 |
宮坂 信彦 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (70332335)
吉原 誠一 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, 研究員 (90360669)
松野 仁美 独立行政法人理化学研究所, シナプス分子機構研究チーム, リサーチアソシエイト (40415302)
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キーワード | テレンセファリン / 神経細胞 / 樹状突起フィロボディア / スパイン / シナプス形成 / 免疫グロブリンスーパーファミリー / 細胞接着分子 / 脳のやわらかさ |
研究概要 |
樹状突起フィロポディアは発達期の神経細胞に多く見られるダイナミックな構造であり、スパインの前駆体と考えられている。しかしながらその形成機構、スパインへの移行過程さらにはシナプス可塑性における役割についてはほとんどわかっていない。テレンセファリン(TLCN)は免疫グロブリンスーパーファミリーに属する細胞接着分子であり、哺乳類の終脳神経細胞(特にスパインをもった神経細胞)に特異的に発現している。これまでに私たちのグループが中心となって、TLCNの終脳特異的転写調節機構、樹状突起選択的局在機構などを解明してきたが、その機能についての研究は遅れていた。平成17年度の研究によって、TLCNの生理的機能に関する以下の新知見を得た。 (1)発達期の海馬神経細胞においてTLCNは樹状突起フィロポディアに高濃度存在しているが、成熟したスパインでは発現が減少している。 (2)TLCN遺伝子欠損マウスでは樹状突起フィロポディア数が野生型マウスに比べて有意に少なく、スパインへの移行が早くなっている。 (3)海馬初代培養神経細胞にTLCNを過剰発現させると、樹状突起フィロポディア数の劇的な増加が見られる。TLCNは、樹状突起のシャフトから新たにフィロポディアを形成、維持するとともに、スパインからフィロポディアへの逆方向の移行も誘導できる。 (4)TLCNによるフィロポディア形成は、TLCNの細胞外及び細胞内の両方の領域が必要である。 (5)成体のTLCN遺伝子欠損マウスの海馬神経細胞では、野生型に比べてスパインが大きくなっており、より安定なシナプス構造を形成している。 以上の結果からTLCNは、スパインへの成熟を遅らせ、可塑的かつ動的な樹状突起フィロポディアを維持することにより、『脳のやからかさ』を保つユニークな分子であることが明らかとなった。
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