研究概要 |
常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)の責任遺伝子(S284L)を導入した遺伝子改変モデル動物(S284L-Tg)の行動・情報伝達系機能の特性を解析した。脳波及びビデオの同時モニタリングでS284L-TgがヒトADNFLEと同様に睡眠中に前頭葉を焦点とするnocturnal paroxysmal dystonia, nocturnal paroxysmal arousal, epileptic wanderingの3種類の自発痙攣を示すことを確認した。このヒトADNFLE相当する自発痙攣を有するS284L-Tgのヒトてんかんモデル動物として有用性を検証するために、各種スクリーニングによるS284L-Tgとwild-typeの比較を試みた。rota-rod test, traction-meterでは有意な差は認められなかった。自発性痙攣を有するにも拘わらず、GABA受容体阻害薬ペチレンテトラゾール(PTZ)誘発試験に対する感受性もS284L-Tgとwild-typeで有意な差はなかった。さらにニコチン誘発試験ではS284L-Tgはwild-typeと比較して、発作発現時間には差はなかったが,S284L-Tgのニコチンに対する感受性がwild-typeと比較して低かった。このフェノタイプの機序解明を目的に、サーカディアンリズムと神経伝達物質遊離をマイクロダイアリーシスで検証したところ、覚醒から睡眠に移行する段階でのGABA遊離の変異は認めなかったが、グルタミン酸の遊離はS284L-Tgで相対的機能亢進を認めた。前頭葉スライスパッチクランプを用いた解析では、S284L-Tgはグルタミン酸系には影響せず、GABA系伝達機能への亢進効果が欠如していた。この機能欠損はシナップスを介した伝達(synaptic)だけではなくシナップス外伝達(extrasynaptic)にも及んでいた。
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