優性遺伝性家族性パーキンソン病(FPD)の中でも頻度の高いPARK8の病因遺伝子産物LRRK2は同一分子内に存在するRocドメインへのGTP結合を必要とするプロテインキナーゼであり、FPD変異体のうち最も頻度の高いG2019S変異体は、野生型よりも高いキナーゼ活性を有することを明らかにした。さらに、LRRK2を一過性に過剰発現させたHEK293細胞をにより代謝ラベリングすると、LRRK2が細胞内でリン酸化を受けていることが判明した。この細胞内リン酸化は、キナーゼ活性を持たないK1906M変異体でも見られることから、自己リン酸化ではなく、他のキナーゼによるリシ酸化と考えられた。また、GTP結合能を持たないT1348N変異体では、細胞内リン酸化は消失した。これらの結果から、LRRK2はGTP結合依存的に他のキナーゼによってリン酸化を受け、活性化される可能性が示唆された。次に細胞内のLRRK2においてリン酸化されているアミノ酸残基の同定を試みた。精製したLRRK2をSDS-PAGE後にトリプシン消化し、MALDI-TOF/MS解析に供した。リン酸化ペプチド検出の高感度化を図るため、リン酸化ペプチドの精製・濃縮に有効とされるFe3+-IMAC法を用いて、LRRK2のリン酸化ペプチドの検出を試みた。トリプシン消化後のペプチド混合物から得られたリン酸化ペプチド画分のMALDI解析を行ったところ、LRRK2のリン酸化ペプチドに対応する質量のイオンが2種類検出された。これらのリン酸化ペプチドのタンデムMS解析を行い、Ser910とSer973がリン酸化されていることを見出した。今後LRRK2の全リン酸化部位を同定し、LRRK2のキナーゼ活性への影響を検討することにより、LRRK2の活性制御機構と、家族性PD変異の効果について検証を進める予定である。
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