研究概要 |
優性遺伝性家族性パーキンソン病(FPD)の病因遺伝子産物LRRK2はGTP結合ドメイン(ROCドメイン)、キナーゼドメインを併せ持つ約2500アミノ酸からなる蛋白質である。LRRK2において自己リン酸化が機能的に重要な働きをしている可能性を考え、GST-ΔN-LRRK2の自己リン酸化部位MALDI-TOF質量分析により解析し、ROCドメイン内にSer1403,Thr1404,Thr1410,Thr1491、キナーゼドメイン内にThr1967,Thr1969の6つの自己リン酸化部位を同定した。各部位についてAla、Asp置換体を作製し、in vitroにおけるキナーゼ活性を解析した。キナーゼドメイン内の自己リン酸化部位に関しては、T1967A変異体が野生型に比して有意なキナーゼ活性の低下を示したのに対し、T1967D変異体が野生型と同程度の活性を示し、Thr1967の自己リン酸化がキナーゼ活性の維持に重要であることが示唆された。T1969A,T1969D変異体は野生型と同程度の活性を保っていた。 ROCドメイン内の自己リン酸化部位に関して、[32P]リン酸を用いた代謝ラベリングにより、培養細胞内におけるGTP結合活性を評価すると、T1491D変異体において、野生型に比してGTP結合型LRRK2の量が減少していた。in vitroにおけるキナーゼ活性を解析したところ、T1491D変異体でキナーゼ活性の低下が見られた。これらの結果から、Thr1491の自己リン酸化はGTP結合活性を低下させ、結果的にキナーゼ活性の低下をひき起こすという、negative feedback活性制御機構が示唆された。 二次元リン酸化ペプチドマッピングを用いて、培養細胞内におけるLRRK2の自己リン酸化パターンを解析した。HEK293細胞にGST-ΔN-LRRK2を過剰発現させ、[32P]リン酸による代謝ラベリングの後、GST-ΔN-LRRK2をグルタチオンビーズでpull-downし、トリプシン消化産物を薄層クロマトグラフィープレートを用いて二次元展開してオートラジオグラフィー解析を行った。その結果、in vitroにおいて[γ-32P]ATP存在下でΔN-LRRK2を自己リン酸化させたときに見られたスポットパターンとよく一致するパターンが得られ、LRRK2はin vitroでも培養細胞内でも同様の自己リン酸化パターンを示すことが示唆された。
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