研究課題
多くの神経変性疾患において、細胞内の異常タンパク質の凝集体形成が共通する病態として知られている。凝集体形成や細胞毒性は、異常蛋白質の蓄積とその分解系のバランスによって規定されると考えられる。ユビキチンプロテアソーム経路は異常蛋白質の主要な分解経路であるが、この経路はATPを利用した蛋白質分解系であるために、ミトコンドリアの機能低下によって大きく影響を受けることが考えられる。ミトコンドリア複合体IやIIの活性低下がパーキンソン病やハンチントン舞踏病で観察されていることから、これらの病態発症とミトコンドリア機能とは密接に関わることが考えられている。ミトコンドリアにある主要な細胞死調節因子としてBcl-2ファミリーがあるが、神経変性に関わる機能に関しての研究は殆ど行われていなかった。ショウジョウバエはゲノム中にただ2つのBcl-2ファミリー分子(Drob-1とその阻害分子Buffy)が存在すること、ショウジョウバエでは優れた神経変性モデルが作成されていることから、神経変性におけるBcl-2ファミリー分子機能解析をショウジョウバエを用いて行った。その結果、Drob-1のノックダウンはATP産生の低下、細胞内ユビキチン蛋白質の蓄積をもたらし、ポリグルタミンによる神経変性を増強した。ミトコンドリア複合体IやIIの阻害剤による膜電位低下、電子伝達効率の低下、生存率低下、ミトコンドリアの形態異常をDrob-1ノックダウンは増強した。これらの結果は、Drob-1がストレスにさらされたミトコンドリアの機能保持を介して、神経保護作用を発揮することを示すものである。よってBcl-2ファミリーはアポトーシス経路の制御に加え、ミトコンドリアの機能保持を介して神経変性の制御を行う分子であることが示唆された。
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