研究課題
本研究で主要な課題の一つとして、統合失調症では、細胞外D-セリンシグナルの減弱によりNMDA型グルタミン酸受容体機能が低下する可能性があることに注目し、D-セリンシグナルを調節する分子細胞メカニズムの検討を行っている。キノリン酸によって神経細胞体を選択的に破壊した内側前頭葉皮質では、注入1週間後の組織中および細胞外液中のD-セリン濃度が著明に低下した(-60%以上)。不可逆的グリア選択的毒素のα-アミノアジピン酸を注入した1週間後には、D-セリン濃度が対照群の85%に減少した。さらに、in vivoにおいて、α-アミノアジピン酸を灌流すると、細胞外D-セリン濃度が軽度ながら有意に低下した(~-10%)。これらの所見から、D-セリンの細胞内外の濃度は、グリアとニューロンの双方によって調節されていることが支持された。一方、統合失調症や薬物性の本症様の精神症状が思春期以降に発症し、これら薬物による動物のモデルも一定の発達段階(臨界期)以降に成立することに着目し、統合失調症関連候補遺伝子として、本症様異常発現薬により、ラットまたはマウスの大脳新皮質あるいは視床で臨界期以降に発現誘導される遺伝子を検索している。このうち、NMDA受容体遮断薬phencyclidine(PCP)に発達依存的に応答する、prt5(PCP-responsive transcript 5 : Leimodin 2(Lmod2))遺伝子について、脳では、基礎的発現・PCP投与後の増加ともに、ほぼ視床に限局しており、Lmod2発現細胞は統合失調症障害される神経回路の一部を構成すると推測された。prt1(SAP97)遺伝子は統合失調症との有意な関連を示した。また、ドーパミン作動薬methamphetamine(MAP)に発達依存的応答を示すmrt1(MAP-responsive transcript 1)の前脳部選択的に過剰発現するマウスの行動学的特徴の解析を開始した。
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