研究課題
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)はアンドロゲン受容体(AR)遺伝子のCAG繰り返し配列の異常延長を原因とするポリグルタミン病である。ポリグルタミン病をはじめとする神経変性疾患の病態に対して、分子シャペロンである熱ショック蛋白質(HSP)は異常蛋白質の集積を抑制し、また分解を促進する作用を有し、細胞保護的に働くことが示されている。今回、ポリグルタミン病の治療薬を探索する目的で、Hsp70誘導剤であるgeranylgeranylacetone(GGA)およびHsp90阻害薬である17-AAG(17-allylamino geldanamycin)の治療効果をSBMAの培養細胞およびマウスモデルにおいて検討した。GGAは培養細胞およびマウスモデルにおいてheat shock factor-1(HSF-1)の核内への集積を増加させることによってHsp70やHsp90などの分子シャペロンの発現を誘導し、神経変性を抑制した。Hsp70およびHsp105の蛋白量は野生型に比べモデルマウスの脊髄において低下しており、ポリグルタミン病の病態においてHSPの発現低下が重要な役割を果たしていることが示唆された。一方、17-AAGも培養細胞およびマウスモデルにおいて、濃度依存性にARの蛋白量を減少させ、神経変性を抑止した。17-AGGによるARの分解促進作用はAR-97Qに対してより強く認められ、Pulse chase法でもAR-97QのほうがAR-24Qより速く分解される傾向が認められた。また、17-AAGによりHsp70の発現誘導もみられた。以上の結果から、17-AAGはAR-Hsp90複合体の構造を変化させることによりユビキチン-プロテアソーム系による変異ARの分解を促進し、神経変性を抑制することが示された。以上の結果より、GGAおよび17-AAGは変異AR蛋白質の凝集抑制および分解促進により神経変性を抑止する効果を有し、培養細胞とマウスモデルの両方で治療効果と安全性が確認された。いずれの薬剤も、SBMAに対する治療法として有望であると考えられる。
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