研究課題/領域番号 |
17025020
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 元 名古屋大学, 大学院医学系研究科, 教授 (20148315)
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研究分担者 |
道勇 学 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90293703)
田中 章景 名古屋大学, 大学院医学系研究科, COE特任助教授 (30378012)
服部 直樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 助手 (10402570)
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キーワード | ポリグルタミン病 / 球脊髄性筋萎縮症 / 軸索輸送 / モーター蛋白質 / dnactin1 / ニューロフィラメント |
研究概要 |
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)の初期病態における神経細胞機能障害の分子メカニズムおよびその可逆性について検討した。SBMAモデルマウスの骨格筋の免疫組織化学を解析したところ、ニューロフィラメントが終板近傍の運動ニューロン遠位軸索に蓄積していた。同様の集積は患者肋間筋でも観察された。また、シナプス小胞関連蛋白質のうちシナプトフィジンはニューロフィラメントと同様の蓄積を示したが、Rab-3Aの蓄積は認められなかった。ニューロフィラメントやシナプトフィジンは軸索内を順行性および逆行性に輸送されるが、Rab-3Aは順行性にのみ輸送されることに着目し、坐骨神経結紮法によりシナプス小胞関連蛋白質の軸索輸送を調べたところ、野生型マウスに比べてSBMAマウスでは逆行性に輸送されるシナプトフィジンの量が有意に減少していることが明らかとなった。この減少はマウスの神経症状発症前から認められ、進行とともに顕著となった。さらに、フルオロゴールドの腓腹筋内ないし坐骨神経断端投与により脊髄前角の運動ニューロンをラベルしたところ、野生型マウスに比べてSBMAマウスでは発症前からラベルされるニューロン数が減少していることが明らかとなった。次に、軸索輸送を担うモーター蛋白質の発現量を定量したところ、SBMAマウスの脊髄運動ニューロンおよび前根ではdynactin 1蛋白質の発現量が発症前から有意に減少しており、そのmRNAレベルも発症前から減少していた。 以上から、ポリグルタミン鎖の延長した変異アンドロゲン受容体の核内集積によるdynactin 1の転写障害が逆行性軸索輸送障害の原因であると考えられた。一方、神経症状発症後早期のSBMAマウスに去勢術を行ったところ、dynactin 1の発現量およびフルオロゴールドによりラベルされるニューロンの数が増加し、症状は可逆的に改善した。
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