研究課題
球脊髄性筋萎縮症(SBMA)は成人男性に発症する下位運動ニューロン疾患であり、アンドロゲン受容体遺伝子(AR)のCAG繰り返し配列の異常延長を原因とするポリグルタミン病である。ポリグルタミン病では、病因蛋白質がニューロンの核内に集積し、転写障害を惹起することが知られているが、そのニューロン変性への寄与については十分に明らかになっていない。本研究において、SBMAの原因蛋白質である変異ARが、培養細胞においてTGF-β受容体(TβRII)のプロモーター活性を低下させ、転写を障害することが明らかとなった。さらに、TβRIIの発現をノックダウンすると、細胞活性が低下し、細胞死が誘導された。SBMAマウス脊髄では、TGF-βシグナルの下流で発現するTIEGなどの遺伝子の発現が抑制されていることも明らかとなった。一方、培養細胞に変異ARを強制発現すると高率に細胞死が誘導されるが、TβRIIを共発現させると細胞死が抑制されること、およびその効果はTGF-βに対する中和抗体の投与によって相殺されることを明らかにした。同様の変化は、脊髄小脳変性症失調症3型(SCA3)の原因遺伝子である変異ataxin-3を細胞に強制発現させた際にも観察された。TGF-βシグナルの阻害剤を培養細胞に投与すると、細胞活性が低下し細胞死が誘導された。同化合物をSBMAモデルマウスの脳室内に投与すると、神経変性が促進され、マウスの寿命や神経症状が悪化することが示された。以上から、SBMAやSCA3などのポリグルタミン病ではTGF-βシグナル伝達異常が運動ニューロン変死に強く寄与していると考えられた。
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