研究概要 |
われわれはMJD病の原因遺伝子産物MJD1に対するユビキチン依存性分解酵素E4Bを同定し、現在モデルマウスを作製して解析を進めているところである。また酵母two-hybrid法によりE4B結合タンパク質としてFEZ1を同定し解析を行った。E4BはU-ボックス型E3ユビキチンリガーゼである。われわれはE4Bの機能解析を目的とし、yeast two-hybrid法によるスクリーニングを行った結果、E4B結合タンパク質としてFEZ1を同定した。FEZ1は線虫の運動や神経軸索の束形成に関与していることが報告されているタンパク質UNC-76の哺乳類オルソログと考えられている。またFEZ1はPKCζ結合タンパク質としても報告されており、活性型PKCζを発現させるとFEZ1は細胞膜から細胞内へと局在が変化する。PC12細胞に活性型PKCζとFEZ1を共発現させるとPC12細胞は神経細胞様に分化し神経様突起を伸長する。したがって、PKCζ-FEZ1複合体が神経細胞様突起形成に関与することが推測されている。FEZ1がE4Bのユビキチン化の基質となる可能性を検討した結果、E4Bの過剰発現によりFEZ1のポリユビキチン化の亢進が認められ,それはPKCζによるリン酸化依存的であった。FEZ1上のポリユビキチン化はLys48ではなく、Lys27を介している。このポリユビキチン鎖の役割を調べるために、E4B及びE4B(P1140A)変異体の安定発現PC12細胞株を作製したところ、NGFやPKCζ-FEZ1依存的な神経細胞様突起の伸長がE4B(P1140A)発現細胞株において抑制された。shRNAによりE4Bの発現を抑制するとNGFによる神経様突起形成の誘導が阻害された。以上より、E4BによるFEZ1のポリユビキチン化は神経様突起伸長のための機能修飾である可能性が示唆された。
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