研究概要 |
17年度までに作出したパーキンノックアウトマウスについては,黒質神経細胞の変性はおきないものの,ドパミンの放出に障害があり,酸化ストレスを生じて黒質変性を惹起する可能性が高いことを明らかにして国際誌に発表した.更に,パーキン蛋白がPARK6の原因蛋白であるPINK1とミトコンドリア外膜で直接結合して,パーキンがPINK1の安定性に寄与していることを明らかにした.家族性パーキンソン病の原因蛋白同土が作用しあうことの直接証明の1つであり,現在投稿中である.パーキンの治療への応用については,サルの黒質に正確にα-シヌクレインを高発現させる方法を完成させ,α-シヌクレインによる神経細胞死をパーキンの同時高発現で予防できるかの検討を開始している(ラットでは既に証明すみ). α-シヌクレインに関しては,そのduplicationiによる優性遺伝のパーキンソン病家系を既に5家系発見し,本邦にもα-シヌクレイン変異が少なくないことを明らかにした.これは正常α-シヌクレインでもその高発現により黒質変性が起きることの証明であり,孤発型パーキンソン病の発症機序研究に大きく貢献する病態と考える.PARK8の原因蛋白であるLRRK2に関しては,これがlipid raftに存在することを明らかにし,現在投稿中である.α-シヌクレインもlipid raftに存在することから,ここでも家族性パーキンソン病原因蛋白同土の相互作用が予想される.更に既知の原因遺伝子何れにもが変異の発見されなかった家系について,新規遺伝子の発見につとめている.
|