研究課題
神経変性疾患における病態の解明は最近のいくつかの原因遺伝子の発見により、めざましい進歩をとげている。しかしながら、本質的な原因として中脳の黒質ドーパミンニューロンの選択的変性機序はいまだ不明である。タンパク質分解系として最も研究がすすんでいるユビキチンプロテアソームの研究と同様に哺乳動物におけるもう一つのタンパク質分解系であるオートファジーの研究も近年めざましいものがある。そこで我々はパーキンソン病におけるオートファジーの関与をさらに検討することとした。最近のオートファジー欠損マウスの解析によりオートファジーによるタンパク質分解がポリユビキチン化タンパク質による凝集体形成に関与し、神経変性疾患の病態にかかわっていることが示唆されている。特にP62タンパク質はポリユビキチン化タンパク質と供に凝集体に存在することから注目されているタンパク質である。さらに、ユビキチン化凝集体を認識してオートファジーに誘導することが知られている。我々は家族性パーキンソン病の原因遺伝子産物であるsynucleinタンパク質とP62の関係を検討したところ、オートファジーが阻害されたとき、synucleinはP62の代謝系に影響を与え、p62をもう一つの分解系であるユビキチンプロテアソーム分解系へと誘導することを見出した。現在ユビキチンプロテアソーム系とオートファジーリソソーム系の2つの分解系を調節する機構は不明であるが、synucleinはその調節因子の1つであり、その下流の経路により基質の分配が調節されることを見いだした。さらにはsynucleinの変異体ではこの調節機構が破綻し、凝集体の形成に関与することが示唆された。
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