研究概要 |
背景:我々はウイルスベクターを用いたアルツハイマー・ワクチンを開発し,非臨床試験を行っている。しかし,高齢者では抗体がよく上がらない人もいると想定され,受動免疫法も必要ではないかと考えられる。欧米で実施されたAN-1792ワクチンの治験ではtissue amyloid plaque immuno-reactive(TAPIR)抗体の上昇と臨床的有用性の相関が示された。そこで,TAPIR様モノクローナル抗体を作製し,治療に応用することを目的に本研究を行った。 方法:凝集Abeta42を抗原としてマウスを免疫し,脾細胞とのハイブリドーマをスクリーニングした。得られた抗体をウエスタンブロット,ビアコア,免疫染色その他でその特性をしらべた。さらに,その抗体をAPP tg mouse(tg2576)の腹腔内に繰り返し投与し,老人斑除去効果を調べた。 結果:クローン3.4A10は凝集Abeta42をよく認識し,凝集Abeta40の認識は弱く,Abeta monomerや変性および非変性APPは認識しなかった。抗原エピトープはAbetaのN末に存在し,免疫組織染色で老人斑の周辺のアミロイドをよく認識し,芯の部分は認識しない傾向がみられた。以上より本抗体はTAPIR様抗体であると結論付けた。3.4A10をtg2576マウスに繰り返し投与すると老人斑,脳のAbeta42が有意に減少し,oligomer(12mer)も減少した。抗体は老人斑アミロイドに結合しており,そのような老人斑ではミクログリアが有意に多数集積していた。また,脳の微小出血の有意な増加は見られなかった。(特許出願) 結論:本抗体はアルツハイマー病の治療抗体として理想に近いと考えられる。今後,ヒト型化して治療に応用するつもりである。
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